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ピルを飲むと不妊治療が必要な体になってしまうのか

ピルを飲むと不妊治療が必要な体になってしまうのか_山口レディスクリニック院長ブログ

たまにある質問の中で、

・不妊治療で妊娠を目指すのに、.ピルを飲んでも大丈夫なの?
といったようなことをお聞きすることがあります。

結論から申し上げると、大丈夫です。

これはピルについて誤解。
おそらくピルが広まった元々のイメージではないでしょうか。

そう思われる根本的な原因として
「ピル = 避妊薬」といったピルのイメージによるものかと思われます。
今回は、ピルと不妊治療のことについて説明していきます。

避妊効果はピルの一部の効能

ピルを飲むと不妊治療が必要な体になってしまうのか_避妊効果はピルの一部の効能_山口レディスクリニック院長ブログ

もちろん、ピルが避妊に有効なのは間違いありません。
しかしながら、それはあくまでピルの効果の一部にしか過ぎないのです。
厳密にいえば、避妊という効果ではありませんが。

またそこから連想されることでこういったことを疑問があるようで
・ピルは不妊を誘発するのではないか
・ピルは避妊薬だから、妊娠に影響するのでは
・ピルを一度飲むと、一生飲み続けなければいけないのでは
といったこともたまに見うけられます。

そういった誤解を生んでしまうのはとても残念なことですが、せめてこのブログをお読みいただいた方だけでも、まずは正しく認識いただければ幸いです。

まず、さきほどピルの効能といった表現をしましたが、これは分かりやすくお伝えするためで、あくまでピルの機能の一部にすぎません。どういうことか、これからなるべく分かりやすく丁寧に説明していきます。

 ピルとはそもそも何なのか

ピルを飲むと不妊治療が必要な体になってしまうのか_ピルとはそもそも何なのか_山口レディスクリニック院長ブログ

正体はホルモン剤。

女性ホルモンや男性ホルモン、また成長ホルモンは聞いたことがあると思います。まさにそのホルモンなのです。これらがどのような働きをするか。ホルモンの種類により異なりますが、女性ホルモンにおいては、女性の生理周期に大きく関係しています。

エストロゲンやプロゲステロンという名称を聞いたことがありますか?不妊治療を行っている方や、ピルをすでに服用されている方は、もちろんご存知かと思います。これらは女性ホルモンの一種で、それぞれに役割が違います。

当クリニックのブログや他記事などで再三ご説明しているので、ここでは簡単に一部をご説明します。エストロゲンは卵胞ホルモンと呼ばれ、主に卵胞の中で卵子を成長させる働きをします。女性らしい身体つきを促進したり、女性の健康には欠かせない成分です。プロゲステロンは、黄体ホルモンと呼ばれ、主に子宮内膜を厚くしたり、妊娠の準備を担います。また、乳腺に働きかけるので、実はバストアップにも役立っていたりし、こちらも欠かせません。

分かりやすくお伝えすると、
・卵を育てるホルモン
・赤ちゃんの部屋をつくるホルモン
こういった感じのイメージで覚えていただければまずは良いかと思います。
ちなみにこれらのホルモンはそれぞれ別にホルモン補充療法で補うことも可能です。

ホルモンバランスが乱れることで起こること

ピルを飲むと不妊治療が必要な体になってしまうのか_ホルモンバランスが乱れることで起こること山口レディスクリニック院長ブログ

こういったホルモンらが通常は身体の中で影響し合って健康が維持されていますが、なんらかの理由により正常に機能しなくなることが起こります。すると、みなさんの身体に現れる症状として一番分かりやすいのは、基礎体温が乱れてくるといったところに顕著に現れてきます。例えば、およそ28日周期の月経の中で、基礎体温は正常であれば上下しますが、これが一定の体温のまま変化がなくなるといったことが起こります。

その理由は、ホルモンの働きが正常に行われなくなることで起こる症状です。なぜなら、ホルモンの機能として、体温を上げたり、下げたりするという働きもあるからです。エストロゲンは低温期を、プロゲステロンは高温期をそれぞれ生み出します。また低温期と高温期がそれぞれ現れることを二相性(にそうせい)といいます。

他に体温でわかる例として、低温ばかり続いているのであればプロゲステロンが働きが悪い。また逆もしかりで、高温ばかりだとエストロゲンの働きが悪といった具合になります。もちろん厳密にいえばそれだけの原因ではなく複合的な要員が絡んでいることが多いですが。

 ピルと女性ホルモンの関係

ここまで女性ホルモンの簡単な説明をしましたが、まとめに入りましょうか。

女性ホルモンとピルの関係は一体なにか。

それはピルが女性ホルモンの働きを助ける役割を担うものだということです。また、ピルを服用するのは1度きりではなく、飲み続けることではじめて効果を発揮します。なぜなら、ピルの錠剤をご覧いただいたことがある方であればお分かりかと思いますが、1日1錠、その日その日に決められた錠剤が個別にシート状に用意されています。これは、飲むタイミングで働かせるホルモンの役割が女性の身体に合わせて調整されているのです。簡単にいえば、エストロゲン、プロゲステロンの配合量などがそれぞれ微妙に調整されています。その理由は、女性の月経周期に合わせたホルモンの量を計算されているからです。

つまり、これを服用し続けることによって、例えば生理不順などで乱れていた生理周期を正常な状態へと導くという働きになります。すると、生理がこないといった症状の方が、徐々に生理がきちんとくるようになってきます。

また、避妊薬としてのイメージを定着させた機能ですが、ピルを服用し続けると生理自体はくるのですが、排卵をしていない状態になります。これはどういうことかというと、疑似月経という状態といいましょうか。簡単にいえば、妊娠していないのに、妊娠したと似た状態になっているということです。妊娠しているのに、さらに妊娠するということはできませんよね。この仕組みを活かして、「妊娠をしない = 避妊薬」となっているのです。お分かりいただけたでしょうか。

妊娠中には排卵が起こらない

そして、妊娠中という状態は、排卵する必要がないために、卵が温存されます。厳密には原子卵胞という卵の元になるものですが、これにより無駄な排卵を抑えられます。元々女性の卵子というものは数に限りがもともとあり、実はご自身が赤ちゃんとして生まれた時が一生のうちで最大の数を保有しており、日々減少し再び作られることはありません。ですから年齢を重ねれば重ねるだけ減少する運命にあるのです。これが男性の精子が日々生成されることとの男女差の大きな違いとなります。卵は新たに作られると誤解されている部分でもあるので、ご注意いただければと思います。

ですから、ピルを服用し続けることにより、排卵を抑えるということは、妊娠を望むタイミングまで限りある卵をなるべく温存するということが可能になります。ですから、不妊の原因の中でも、特に高齢によるところの卵の数がそもそも少ないといったことに、若いうちから備えておくようなことがピルをうまく利用することにより可能となるわけです。もちろん、不妊の原因は卵の数の問題だけではないので、ピルを飲めば不妊が治るといった誤解をされないようにだけご理解いただければと思います。

ですから、不妊の原因となるうちの、生理不順であったり、排卵障害などに役立てられるため、ピルを服用するということはとてもメリットがあるということがお分かりいただけたでしょうか。むしろ不妊治療に役立つ手段のひとつとしてピルもあると思っていただけたら幸いです。もちろん、デメリットも存在しますので、気になる方はピルのページをご確認ください。

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⇒ ピル処方・月経調整について(説明ページ)
⇒ ピルを飲むと不妊治療が必要な体になってしまうのでは?(ブログ記事)
⇒ ピルの服用でがんや不妊症になるという誤解(ブログ記事)
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