生殖医学会 報告(着床前診断、モザイク胚)
生殖医学会に行ってまいりました。
特に注目した点は2つございましたので報告いたします。
1. 着床前診断の報告について
まず、着床前診断は保険診療ではなく先進医療でもないため自費扱いとなります。
2022年4月の保険適用以降、名古屋市の場合は助成金がないため全額自費となり、着床前診断をされる方は減少傾向になりますが、依然、反復着床不全、不育症等には有効な治療方法と考えられていますので特に35歳以上の方には今後も検査を勧めていきたいという発表がありました。
*35歳以上の方は受精卵の染色体異常が増加するため
着床前診断は無駄な移植を避けるためには有効な方法です。
染色体異常を移植すると妊娠した場合でも大部分が流産してしまいます
– 着床前診断についての補足(どの胚盤胞まで着床前診断を行うか?)
・良好胚盤胞に行う場合は年齢に関係なく7割近い妊娠率が期待できます
・不良胚盤胞に行う場合は3割以下に低下します。
良好胚に着床前診断をしていただくのがベストだと思いますが、不良胚に対しても検査だけして検討されることも方法だと考えています。
*将来的に良好胚を得られる可能性が高い方は再度採卵をしていただいても良いですが、高齢でAMHが低い方は良好胚を得られる可能性が低くなります。その場合は不良胚でも着床前診断を施行し、自費で貯卵が可能ですので、貯卵してから再度採卵するのも一つの手段だと思います。
*良好胚、不良胚、すべてを着床前診断していただくのも考慮いただいても良いと思います。今回の学会発表で、妊娠率は低いですが出産したケースが報告されました。
2.モザイク胚の取り扱いについて
検査に出してA判定がない方にB判定のものを移植するかどうか?
40歳以上の方は、A判定(正常染色体)の確率は3分の1程度ですので、A判定がない場合が多々あります。
B判定(モザイク胚)の取り扱いについては
モザイクの頻度によっても扱いが変わります。
染色体異常の細胞が入っている
・80%以上の頻度の場合は高頻度モザイク胚
・79%以下の頻度の場合は低中頻度モザイク胚
と呼びます。
現在の国内では、低中頻度モザイク胚は移植を許容しており過去には正常染色体の出産の報告しかありません。ただし、今回海外の文献で低中頻度モザイク胚からでも染色体異常の出産があったと1例だけではございますが発表がありましたので、気に留めていただくと良いかと思います。
– モザイク胚の取り扱いについての補足(NIPT)
NIPTを含む出生前診断をできる時代になりましたので、
ご夫婦がご納得いただければ、モザイク胚でも移植していただき確認することも方法の一つかと思います。(特に高齢の方でモザイク胚しか得られない方で、モザイク胚を移植する場合)
着床前診断が早く先進医療に認可されると、もっと適切な治療にも繋がると学会でも発表がありましので、期待して待ちたいと思います。