不妊症治療の専門医。タイミング法など自然周期から、人工授精・体外受精・顕微授精までの高度生殖医療。不妊症にお悩みの方、不妊治療のご相談は名古屋市南区の山口レディスクリニックへお気軽にどうぞ。

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男性不妊の原因「カルターゲナー症候群」について

当クリニックでは、多くのご夫婦の妊活をサポートさせていただいておりますが、不妊治療において「女性側だけでなく、男性側の要因も同じくらい重要」ということを改めてお伝えしたく思い投稿いたします。

不妊症の原因は、女性側が約40%、男性側が約30%、そして原因不明が約30%と言われています。つまり、男性側に何らかの要因があることも多いのです。その中でも、今回は「カルターゲナー症候群」という、あまり知られていない男性不妊についてご紹介いたします。

カルターゲナー症候群とは?

体内の「線毛」という微細な構造の働きが生まれつき悪いことで起こります。

主な症状

1.慢性副鼻腔炎 – いわゆる「蓄膿症」が慢性的に続く
2.気管支拡張症 – 気管支が異常に拡張し、慢性的な咳や痰が出る
3.内臓逆位 – 心臓が右側にあるなど、内臓の位置が通常と逆になる

パートナーの男性に、子どもの頃から慢性的な鼻づまりや咳があった場合、実はこの疾患が隠れているかもしれません。

男性不妊の原因になる理由

線毛と精子の関係

私たちの体内には「線毛」という、まるで小さなほうきのような構造があります。これは呼吸器官で細菌やウイルスを外に追い出す大切な働きをしています。

実は、男性の精子の「しっぽ」も、この線毛と同じような構造でできているのです。カルターゲナー症候群の方は、この線毛の動きに生まれつき障害があるため、精子が全く動けない状態になってしまいます。

具体的な影響

・精子の数は正常なのに、運動率が0%
・精子が卵子まで泳いで到達することができない
・自然妊娠が非常に困難

「精子の数は問題ないのに、なぜ妊娠しないの?」とお悩みのご夫婦は、もしかするとこのような背景があるかもしれません。

診断について

こんな症状がありませんか?

男性に以下のような症状が見られる場合は、相談をお勧めいたします

・呼吸器症状

-子どもの頃からの慢性的な鼻づまり
-繰り返す副鼻腔炎
-慢性的な咳や痰
-中耳炎を繰り返した経験

・精液検査での特徴

-精子濃度は正常または正常に近い
-しかし精子運動率が著しく低い(0%に近い)

家族歴も重要

この疾患は遺伝性のため、家族に同様の症状を持つ方がいらっしゃる場合は、注意が必要です。

治療について

男性不妊の基礎的な検査や処置を行い、より高度な治療が必要な場合は信頼できる泌尿器科専門医に依頼することになります。

治療選択肢

顕微授精(ICSI)が第一選択となります

・動かない精子を直接卵子に注入する方法
・自然妊娠や一般的な体外受精では妊娠が困難

最新の動向

2024年4月より、カルターゲナー症候群を含む線毛機能不全症候群が国の指定難病に認定されました。これにより、医療費の負担軽減や社会的支援が受けやすくなりました。

妊娠・出産の可能性

適切な診断と治療により、多くのご夫婦が妊娠・出産を経験されています。

・早期の正確な診断
・適切な治療法の選択
・ご夫婦での理解と協力

が大切です

ご夫婦で向き合う大切さ

不妊治療は、女性だけでなく男性にとっても大きな負担となることがあります。特に、生まれつきの疾患が原因となっている場合、男性側に自責の念や落ち込みが生じることも珍しくありません。

しかし、これは誰のせいでもない、医学的な事実です。大切なのは、ご夫婦が一緒に正しい情報を共有し、支え合いながら治療に向き合うことです。

まとめ

カルターゲナー症候群は、約2万人に1人の頻度で発症するとされており、実際には診断されていないケースも多いと考えられています。

妊活は時に長い道のりとなることもありますが、正しい知識と適切なサポートがあれば、必ず前に進むことができます。

男性不妊症の基礎疾患として様々な問題が発生しますので、それらを早期に診断して適切に治療していくことが大切です。

ご心配に思われる方は一度ご相談ください。