不妊症と自己抗体の関連について
不妊症に悩む女性にとって、自己抗体の存在が妊娠に影響を及ぼす可能性があることは、知っておくべき重要なポイントです。
自己抗体は、自己免疫疾患の一環として、自分自身の体を攻撃する抗体であり、不妊症や流産の原因となることがあります。今回は、いくつかの主要な自己抗体と不妊症との関連について説明します。
1.抗リン脂質抗体症候群(APS)
抗リン脂質抗体症候群(APS)は、習慣流産(不育症)の原因の一つとされています。APSでは、血栓が形成されやすくなり、胎盤の血流を妨げることで、妊娠の維持が困難になることがあります。妊娠を希望する女性にとって、APSの診断と治療は非常に重要であり、適切な管理が流産のリスクを減少させる可能性があります。
2.抗核抗体(ANA)
抗核抗体(ANA)は、不妊症との直接的な因果関係が完全には解明されていないものの、特定の染色パターンが受精障害を引き起こす可能性が示唆されています。また、ANA陽性の女性の中には、APSを併発しているケースがあり、これが不妊症や不育症の原因となり得ます。妊娠を考える際には、ANAの検査を受け、必要に応じて治療をおこないます。
3.抗DNA抗体
抗DNA抗体は、不妊症に直接的な影響を与える証拠は限られていますが、全身性エリテマトーデス(SLE)を持つ女性では、妊娠合併症のリスクが高まることがあります。SLE患者は、妊娠計画の際に、リスクをしっかりと評価し、治療方針を決定します。
自己抗体の検査と不妊治療
不妊治療を受ける際には、自己抗体の存在を検査し、必要に応じて治療を行うことを推奨しています。治療によって流産リスクを低減し、妊娠の成功率を高めることが期待できます。
具体的な治療について
1.2.3とも、低用量アスピリン療法を当院では施行しております。
1に関してはヘパリン療法も存在しますが当院では施行しておりません。
低用量アスピリン療法に抵抗感がある方は、柴苓湯(サイレイトウ)を処方しています。
妊娠が判明した方でも抗体が高い方は安定期まで内服を持続していただきます。
自己抗体が不妊症に与える影響を理解し、適切な治療を受けることで、妊娠の可能性を高めたり、流産率を低下させることが期待できます。