妊娠初期の花粉症のお薬について
花粉症の症状に悩まされる患者様が増えてまいりました。特に、当院で不妊治療を乗り越え、無事に妊娠初期を迎えられた患者様にとって、この時期の体調管理は非常に気を使われることと思います。
「くしゃみをするたびにお腹に力が入ってしまい、赤ちゃんへの影響が心配…」
「妊娠初期は薬を飲んではいけないと言われているから、ひたすら我慢するしかない…」
診察室でも、そのような不安の声をよくお聞きします。
つわりで辛い時期に花粉症の症状まで重なると、心身へのご負担は計り知れません。
今回は、お薬に慎重になるべき「妊娠初期(特に妊娠4週〜15週の器官形成期)」における、花粉症の薬物治療について当院の考え方をお伝えいたします。
妊娠中のお薬に対する基本的な考え方
大前提として、妊娠初期は赤ちゃんのさまざまな器官が作られる非常に大切な時期です。そのため、不要なお薬を避けることは正解です。
しかし、「絶対に薬を使ってはいけない」というわけではありません。
くしゃみの連発による腹圧の上昇や、鼻水・鼻閉による睡眠不足、それらがもたらす強いストレスは、お母様にとってもお腹の赤ちゃんにとっても決して良い状態とは言えません。
当院では、「お薬を使うことのメリット(症状の改善・母体の安静)」が「お薬によるリスク」を明確に上回ると判断した場合に限り、安全性の高いお薬を慎重に選択して処方いたします。
妊娠初期の花粉症:具体的な薬物治療の選択肢
当院では薬物治療が必要な方には、初期対応として以下の1、2を投与いたします。
効果が不十分な人に対しては3を投与検討しております。
1. 局所療法(点鼻薬・点眼薬) 妊娠中の花粉症治療において、第一選択となるのが点鼻薬や点眼薬です。 飲み薬(全身療法)とは異なり、鼻や目といった局所のみに作用するため、血液を介して赤ちゃんへ移行する成分量はごくわずかです。妊娠初期であっても、ステロイド点鼻薬や抗アレルギー点眼薬などは比較的安全に使用できるとされています。まずはこれらの局所療法で症状のコントロールを目指します。
2. 漢方薬による治療 点鼻薬や点眼薬だけでは症状が和らがない場合、漢方薬の併用を検討します。 花粉症(アレルギー性鼻炎)によく用いられる「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」などは、水っぽい鼻水やくしゃみに効果的であり、妊娠中でも処方されることの多いお薬です。
3. 内服薬(抗ヒスタミン薬) 局所療法や漢方薬でも症状が抑えきれず、日常生活や睡眠に大きな支障をきたす場合には、内服薬(飲み薬)を検討します。 抗ヒスタミン薬の中には、これまでの長年の使用経験やデータから、妊娠中に使用しても胎児への影響が少ない(催奇形性のリスクが増加しない)とされているお薬があります。(例:ポララミン、ロラタジン、セチリジンなど) 当院では、患者様の症状の重さや妊娠週数を慎重に見極め、最も適切と考えられるお薬を必要最小限の期間で処方いたします。
⚠️ 最もご注意いただきたいこと(自己判断の危険性)
絶対に避けていただきたいのは、**「市販の鼻炎薬を自己判断で服用すること」**です。 市販薬には様々な成分が配合されており、中には妊娠中の血管収縮作用などにより、胎盤の血流を低下させる恐れのある成分(プソイドエフェドリンなど)が含まれているものもあります。「以前から飲んでいて効くから」と、妊娠前と同じお薬をご自身の判断で服用することは大変危険ですのでお控えください。
最後に
不妊治療という険しい道のりを経て授かった新しい命。
「薬の影響で何かあったら…」と極度に不安になられるお気持ちは痛いほどよく分かります。
しかし、お母様が心身ともにリラックスして過ごせる環境を作ることが、赤ちゃんにとって一番の安らぎに繋がります。花粉症が辛い時は、決してご自身だけで抱え込まず、いつでもお気軽に当院にご相談ください。
