不妊症治療の専門医。タイミング法など自然周期から、人工授精・体外受精・顕微授精までの高度生殖医療。不妊症にお悩みの方、不妊治療のご相談は名古屋市南区の山口レディスクリニックへお気軽にどうぞ。

母体血清マーカー検査(クアトロテストTM)

母体血清マーカー検査(クアトロテストTM)は、妊婦さんから採血した血液中の4つの成分を測定して、胎児がダウン症候群、18トリソミー、開放性神経管奇形である確率を算出するスクリーニング検査です。

検査の目的

クアトロテストは、胎児が対象の疾患に罹患している確率を算出するスクリーニング検査です。より正確な情報を得るための、羊水穿刺による検査や、画像診断の必要性を考慮する材料になります。

クアトロテストは、妊婦さん一人ひとりの確率を算出します。

さらに、基準となる確率(カットオフ値)より高い場合はスクリーニング陽性、低い場合はスクリーニング陰性と報告されます。

対象となる疾患
ダウン症候群 (21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形です。

ダウン症候群とは

ダウン症候群は、主に21番目の染色体が3本あることにより生じます。知的発達や運動能力の発達に遅れが見られます。病気にかかりやすく、心臓や内臓の病気を合併する可能性が高くなることが知られています。これらの合併症は治療が可能です。出生後、合併症を早期に見つけ、適切な治療を行うことが重要です。家族の積極的な関わりや専門家によるサポートのもとで早期からの療育や、特別に配慮された教育により、成人して社会生活を営むことも可能になりつつあります。

18トリソミーとは

18トリソミーは、18番目の染色体が3本あることにより生じます。多くの場合に主に心臓の形に変化が見られ、胎児がお腹にいる時期から目立った発達の遅れがあります。知的発達の障害は重度とされます。最近では、積極的な治療などで5~10歳ごろまでゆっくり発育・発達される方もいます。

開放性神経管奇形

妊娠初期に形成される胎児の神経管が正常に形成されないために、胎児の脳や脊髄に障害が起きている状態です。二分脊椎(脊椎が正常に形成されない場合)や無脳症(頭蓋骨が正常に形成されないために、脳が発達しない場合)があげられます。

検査の方法

妊婦さんから血液を採取し、血液中の4つの成分 (AFP、hCG、LE3、Inhibin A)を測定します。これらは妊娠中に胎児または胎盤で作られる成分です。

これらの成分の値は、妊娠が進むにつれて増減しますが、胎児が検査の対象疾患であるかどうかも影響します。

クアトロテストは、年齢と4つの成分の値、および下の図のような因子を用いて、胎児がそれぞれの疾患であるかどうかについて、妊婦さん一人ひとりの確率を算出します。

 

妊婦さんの年齢が高くなるほど、ダウン症候群や18トリソミーの赤ちゃんが生まれる頻度が高くなります。クアトロテストは、母体年齢に固有の確率をもとに妊婦さん一人ひとりの確率を計算しているため、年齢の高い妊婦さんほどクアトロテストの検査結果の確率が高くなる傾向があります。

検査を受ける時期について

検査推奨時期は、妊娠15週から17週頃までです。
妊娠15週0日から21週6日まで検査をすることが可能ですが、クアトロテストの結果を見てから羊水穿刺による検査を受ける場合があるため、17週頃までに受けることが望ましいです。なお、妊娠15週未満では検査できません。

所要日数

所要日数は約10日です。

クアトロテストの精度について

クアトロテストはスクリーニング検査です。ダウン症候群を例にとると、ラボコープ・ジャパンが1999年から2004年までに行った19,112例の調査からは、スクリーニング陽性の結果は約9%(1,763例/19,112例)で、そのうち実際にダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していたのは約2%(39例/1,763例)でした。

また、同調査結果からは、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していたのは合計45例でした。そのうち39例がスクリーニング陽性であったことから、ダウン症候群の検出率は87%(39例145例)でした。同様に、18トリソミーの検出率は77%、開放性神経管奇形の検出率は83%でした。

検査結果の報告の仕方

妊婦さん一人ひとりの確率が1/500」のように確率で報告されます。それぞれの疾患について、基準となる確率(カットオフ値)が定められています。カットオフ値と検査を受けた妊婦さんの確率を比較し、カットオフ値よりも高い場合はScreen Positive(スクリーニング陽性)、低い場合にはScreenNegative(スクリーニング陰性)と報告します。ただし、クアトロテストは確定診断ではなくスクリーニング検査ですので、次のように解釈します。

確率について

確率が1/500であれば、「同じ1/500(0.2%)の結果を得た妊婦さんが500人いたとすると、その中の1人(0.2%)が対象疾患の胎児を妊娠している可能性がある。残りの499人(99.8%)の妊婦さんの胎児は対象疾患ではありません」と解釈します。

Screen Positive(スクリーニング陽性)とは

「胎児が対象疾患である確率はカットオフ値より高いが、生まれる赤ちゃんが必ず対象疾患に罹患しているということではない」と解釈します。

Screen Negative(スクリーニング陰性)とは

「胎児が対象疾患である確率はカットオフ値より低いが、対象疾患に罹患した赤ちゃんが絶対に生まれないということではない」と解釈します。

クアトロテスト後の検査

報告された確率を確認した後に、胎児が対象疾患であるかどうかについて、より正確な情報を得るための検査があります。検査を受けるかどうかを担当医や専門医にご相談ください。

ダウン症候群または18トリソミーの場合

ダウン症候群と18トリソミーは、羊水染色体分析が確定診断となります。羊水染色体分析は、羊水を採取して胎児の染色体を調べる検査です。

羊水の中には胎児の細胞が含まれており、この細胞の染色体を観察し、胎児の染色体に変化「染色体異常」があるかどうかを調べます。羊水染色体分析では、ダウン症候群や18トリソミーを含む染色体の「数」の変化と、染色体の形が変わる「構造」の変化を検出します。

羊水染色体分析では、羊水を採取する際に妊婦さんの腹部に細い針 (穿刺針)を刺しますので、危険がまったくないわけではありません。穿刺後に最終的に流産や胎児死亡に至ることもあり、その確率は0.2%~0.3%(1/300~1/500)といわれています。

開放性神経管奇形の場合

超音波検査などの画像診断、または羊水中のAFPなどの値を調べる検査があります。羊水AFP値が高い場合は、アセチルコリンエステラーゼも測定します。羊水の採取方法は前記と同じです。