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診療トピックス

【反復着床不全】結果が出ない方へ 保険診療編

良好な受精卵を複数回移植しても、なかなか着床に至らない。 そうした状況に直面し、不安や焦りを感じている方もいらっしゃるかもしれません。

当院では、体外受精に臨むすべての方に、できるだけ少ない回数で妊娠に至ることを目標に治療を行っています。

今回は、良好な胚を移植しても妊娠が成立しない「反復着床不全」と診断された方や、今後の治療に不安を感じている方に向けて、保険診療の範囲内で試すことができる2つの有効なアプローチについてご紹介します。

なぜ、着床しないことがあるのか?

着床がうまくいかない原因は様々ですが、その大きな要因の一つに「受精卵の染色体異常」が挙げられます。

根本的な対策として、移植前に受精卵の染色体を調べ、異常のない胚だけを移植する「着床前遺伝子検査(PGT-A)」という方法があります。これは妊娠への近道となる可能性がある一方で、現在は保険適用外の自費診療であり、非常に高額な費用がかかるのが現状です。

そこで今回は保険診療の枠組みの中で着床の可能性を高めるための治療をご提案しています。

保険診療でできる、着床を助ける2つの選択肢

反復着床不全の方に対して、保険診療でご提供できる代表的な選択肢が2つあります。

1.アシステッドハッチング(AHA:孵化補助法)
2.高濃度ヒアルロン酸含有培養液の使用

これらの方法は、受精卵の染色体異常を調べるものではありませんが、受精卵が子宮内膜に着床するプロセスを物理的にサポートし、妊娠の可能性を高める効果が期待できます。

① アシステッドハッチング(AHA)とは?

受精卵は、「透明帯」という卵の殻のような膜に包まれています。着床するためには、赤ちゃんになる部分(胚盤胞)がこの透明帯を破って外に飛び出す「孵化(ハッチング)」というプロセスが必要です。

アシステッドハッチングは、この「孵化」をお手伝い(アシスト)する技術です。具体的には、レーザーを使って透明帯に小さな切れ込みを入れたり、一部を薄くしたりすることで、胚がスムーズに殻から出られるようにサポートします。

これにより、自力で孵化する力が少し弱い胚でも、着床しやすい状態へと導くことができます。

② 高濃度ヒアルロン酸含有培養液とは?

これは、胚移植の際に使用する特殊な培養液のことです。

高濃度のヒアルロン酸を含んでおり、このヒアルロン酸には、子宮内膜に胚が接着するのを助けると考えられています。

この培養液を移植時に使用することで、胚が子宮内膜にくっつきやすくなり、着床率の向上が期待できます。

ご注意いただきたい点(保険適用について)

ご紹介した「アシステッドハッチング」と「高濃度ヒアルロン酸含有培養液の使用」は、どちらも保険が適用されますが、初めての移植から適用となるわけではありません。

現在の保険制度では、「前回の胚移植で妊娠に至らなかった場合」に、2回目以降の移植で適用が認められています。

最後に

複数回にわたり移植がうまくいかないと、「この先どうすれば…」と大きな不安に駆られてしまうことと思います。

当院では、患者様お一人おひとりのこれまでの治療経過やご希望を丁寧にお伺いしながら、次に進むべき最適な方法を一緒に考えていきますのでご相談ください。

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