不妊症治療の専門医。タイミング法など自然周期から、人工授精・体外受精・顕微授精までの高度生殖医療。不妊症にお悩みの方、不妊治療のご相談は名古屋市南区の山口レディスクリニックへお気軽にどうぞ。

体外受精-胚移植ついて

体外受精胚移植を受けられる方へ

はじめに

体外受精胚移植(IVF-ET)は、当初卵管のない人のための治療法でしたが、現在では高度の男性不妊症や難治性不妊症等の治療の一つになっており、不妊治療の中でも最終的な治療として位置づけられています。近年では年間40万件以上が体外受精の実施されており、年々増加しています。また、40歳以上の方においては、一般的な不妊治療の位置づけになっております。

ART治療周期数2016

( *ART 生殖補助医療)

ART妊娠率・生産率・流産率2016

( *ET 胚移植 )

方法とおおまかな流れ

月経・排卵周期と凍結胚による体外受精の流れ図説 - 名古屋不妊治療山口レディスクリニック

具体的な手順

実際に行う手順は以下の通りです。

排卵誘発
(月経2・3日目~)

主に高齢、または卵巣機能の低下により排卵の機能を高めるために行います。方法は飲み薬や注射などがあります。
方法により最低2~4日/週程度通院が必要となります。

採卵・媒精
(月経約14日前後・排卵時)

卵子・精子それぞれを採取し、体外で受精させます。
採卵は5~40分程度。安静時間を含め3~4時間程度。

③ 受精卵の培養

受精卵を再び体内へ戻す最適な状態になるまで発育させます。発育状態により、妊娠率に大きく影響します。

④ 受精卵凍結

体内へ戻すのに最適な状態まで発育した卵は、一旦凍結されます。卵巣状態が最適な周期に合わせ、再び体内へ戻すことが可能です。

⑤ ホルモン補充
(採卵の翌周期以降の排卵時期)

胚移植後に妊娠に適した子宮内の状態を整えていきます。

⑥ 融解胚移植
(⑥´新鮮胚移植)

凍結された卵を体内へ戻すために、融かしてから体内へ戻します。
移植時間は5~10分程度です。

⑦ 妊娠判定

尿検査、超音波検査を行います。

上記① ~ ⑦についての詳しい説明

① 排卵誘発

通常、自然排卵では卵胞(卵子の入った袋)が1個のみ発育します。
排卵誘発では、卵胞を複数育てるために、飲み薬(クロミッド、セロフェン等)やHMG注射による卵巣刺激を開始します。

来院日:月経2・3日目頃

< 刺激方法 >

・クロミッド法
・アンタゴニスト法
・ショート法
・ロング法
どの方法で行うかは医師やスタッフと相談して決めます。

各方法の比較は以下の通りです。

刺激方法 通院頻度 排卵誘発費用 平均発育卵胞数 対象の方 メリット デメリット
クロミッド 2日に1回~毎日 約7万~ 約3~6個 ・AMH*1が低い
・高齢
・卵巣の反応性が低下
・毎日通院できない
・OHSSになりやすい
・注射が少ない
・費用が少ない
・通院が少ない
・OHSSになりにくい
・採卵数が少ない
アンタゴニスト 数日以上/週 約9万~ 約7~10個 ・多嚢胞性卵巣*2
・OHSS*3になりやすい
・クロミッドで採卵率低い
・発育卵胞が多い
・OHSSになりにくい
・誘発剤の反応、効きが悪い方には向かない
ショート 数日以上/週 約9万~ 約7~10個 ・卵巣の反応性が低下 ・発育卵胞が多い ・OHSSになりやすい
ロング 数日以上/週 約9万~ 約7~10個 ・35才以下 ・発育卵胞が多い

・卵胞が均等に育ちやすい

・OHSSになりやすい

・HMG注射が多い

*1…AMH(抗ミュラー管ホルモン)
卵巣予備能を示すものです。数値が高いほど、卵子がたくさんある状態です。
*2…多嚢胞性卵巣
卵巣内に、小卵胞がたくさんある状態です。
*3…OHSS(卵巣過剰刺激症候群)
卵巣やお腹の中に水がたまった状態です。腹痛、お腹の張り、吐き気等の症状がでます。

刺激方法割合201905-名古屋市南区不妊治療専門_山口レディスクリニック-01

⇒ ” 採卵方法「アンタゴニスト」「クロミッド」について” 

② 採卵・媒精

採卵

採卵とは、卵胞に針で卵子を採取することをいいます。
採卵は、軽い麻酔(静脈麻酔)をかけ、眠っている間に行います。

媒精

媒精とは、採取した卵子を培養(4~5時間)した後に、体外受精・顕微授精を行うことをいいます。

通常は、体外受精(卵子の入った容器に精子をふりかける)を行います。
ただし、以下条件の方等は、顕微授精(直接、卵に精子を1匹注入する)により受精させます。

・高度の男性不妊の方
・体外受精で低受精率の方
・抗精子抗体陽性

採卵を受けられる方へ(持ち物、当日の注意点など)

③ 受精卵の培養

受精卵は通常、下図のような発育をします。

受精卵の発育図

※ 発育スピードや質等は個体差があります。

<受精卵の発育率>

採卵後1日目
正常受精した卵のうち

2日目の4分割卵まで
90%以上が発育

2日目
4分割卵のうち

5~7日目の胚盤胞へ到達する卵は
50%程度
※ 途中で発育停止になる受精卵がでてくるため

※ 個人差があります

卵胞の数が多ければ多いほど、採取できる卵子の数も多くなり、妊娠する確率も高くなります。

胚盤胞は、その後孵化
子宮内膜と接着(=着床)
妊娠成立となります。

<受精卵の評価(=グレード)について>

受精卵は、2日目の4分割卵と胚盤胞において、評価(=グレード)をつけます。

グレードは5段階(1~5)
グレード1が最も良い評価となり、グレードが良いほど妊娠率は高くなります。

2日目のグレード図

グレード1:割球が均等で、細胞の断片がない受精卵。
グレード5:割球が不均等で、細胞の断片が多い受精卵

<胚盤胞において>
『発育ステージ / ICM / TE』の3項目で評価します。

発育ステージ

1~6まで
胚盤胞がどの段階にあるかを示す
原則、ステージ3~5で凍結

ICM

将来、胎児になる細胞
Aが最も良い評価

TE

将来、胎盤になる細胞
Aが最も良い評価です。

これら3つを組み合わせて表記します。

胚盤胞のグレード図

胚盤胞グレード評価図
図の例のように「4AB」など。
3BB以上が、グレードが良い胚盤胞で、妊娠率は高くなります。

④ 受精卵凍結

受精卵は、卵細胞内の水分を抜いてから、液体窒素で凍結します。
凍結した受精卵(凍結卵)は、液体窒素中で半永久的に保存が可能です。

凍結時期や個数

採卵2日後の説明時
医師やスタッフと相談の上、決定

通常の凍結
移植時期

凍結:「胚盤胞」か「2日目の4分割卵」
移植:採卵の翌周期以降

< 注意点 >
*採卵翌周期以降は、自然に近いホルモン値になり、子宮内膜の環境は良い状態といえます。そのため、全部の受精卵を凍結して、その良い状態の時に融解胚移植することが多くなっています。
*凍結により、受精卵が傷害される確率は数%で、ほとんどの受精卵が元の状態に戻ります。

⑤ ホルモン補充

ホルモン補充により、胚移植後に妊娠しやすい子宮内膜環境にします。
方法は「飲み薬・注射・貼り薬・膣座薬等」によるホルモン補充を行います。

必ず医師の指示通りに服用、または、ご来院ください。
妊娠成立した場合は、妊娠10週頃まで、ホルモン補充を行います。

⑥ 融解胚移植

融解胚移植とは、凍結卵を融かし(=融解)、移植をすることをいいます。

体外受精_凍結胚移植のスケジュール - 名古屋不妊治療山口レディスクリニック

2日目の凍結卵を
移植する場合

排卵日から2日目に
凍結卵を融解
同日に移植を行ないます。

胚盤胞を移植する場合

排卵日から5日目に
胚盤胞を融解
同日に移植を行ないます。

排卵がない場合について

融解胚移植は可能です。

手順

① 生理中からエストロゲン製剤(貼り薬・飲み薬・注射等)の使用を開始
② 子宮内膜の厚さが、自然排卵と同じ8mm以上になるまで続ける
<子宮内膜が8mm以上になったら>
③ ホルモン採血
<ホルモン値が良ければ>
④「仮の」排卵日を決定
⑤ 上述と同様に移植を行なう

融解胚移植を受けられる方へ(持ち物、当日の注意点など)

⑥´ 新鮮胚移植

採卵2日目、または、5日目に移植(=新鮮胚移植)することも可能です。
新鮮胚移植は、以下の条件を満たす場合に限ります。
◆ 発育卵胞数が少ない
◆ 採卵時のホルモン値が低い
◆ 採卵時の子宮内膜が8mm以上
◆ OHSSになる可能性が低い
◆ 採卵2日前の黄体ホルモン値が2.0ng/ml以下

<注意点>
*採卵後は、強力な排卵誘発により、ホルモン値が非常に高くなっています。それは、受精卵が発育する卵管や、受精卵が着床する子宮内膜の環境が良くない状態です。その状態で新鮮胚移植をした場合、妊娠しづらいだけでなく、OHSSになる可能性も高くなります。
*その他の注意点は、融解胚移植と同じです。

⑦ 妊娠判定

排卵日から約20日目頃

妊娠判定のため尿検査と超音波検査を行います。
妊娠していない場合は生理が来ます。

体外受精で凍結胚を使用する理由

近年では凍結胚によって出産した割合は8割以上に増加、新鮮胚でこどもが産まれているケースは2割未満になっているのが現状です。

排卵誘発した周期にはエストロゲンなどが上昇したり、ホルモン状態や内膜の通常の状態と異なるため、凍結胚を使用した方が採卵した周期に戻すよりも、自然に近くなり着床の条件が良くなるためです。年別FETorICSIorIVF出生児数2016

( *FET 凍結胚移植 *ICSI 顕微授精 *IVF 体外受精 )

全国データでみても、当院においても同様に新鮮胚よりも凍結胚による妊娠率が良好なため、近年では新鮮胚で戻すのではなく、1周期待っていただいて凍結胚で戻すケースが増加しています。

胚移植時に1個移植をおすすめする理由

妊娠率(移植胚数・ステージ別)

近年では多胎妊娠(双子)が減少しておりますが、1個移植が8割以上、2個戻している方は2割未満で良好胚の場合は35歳以上の方でも1個移植をおすすめしております。
もし良好胚を2個戻す場合には、双子になりやすいという事実があるためです。

1回目に不成功した場合などに、焦る気持ちから少しでも多く戻すことにより、妊娠する確率があがると期待される気持ちは痛いほど分かりますが、多胎妊娠率があがる、すなわち双子になる可能性が高まりますので、そういった理由から基本的には良好胚は1個移植をおすすめしていることをご理解ください。

よく勘違いされがちなのが、グレードにより異なりますが、良好胚を移植する際、1個から2個に増やしたことで、妊娠率が2倍になるわけではなく、多くても若干の増加しか見込めないのが実状です。

実績

当院の実績は、以下の通りです。 (2018年までの実績)

発育卵胞数あたりの採卵数(採卵率) 約60~80%
体外受精の受精率 約60~70%
顕微授精の受精率 約70~80%
胚移植あたりの妊娠率 約35%
胚移植後に出産できる生産率 約27%
流産率 約20~25%

*上記は全て個人差があります。

安全性およびリスク

◆ 強力な排卵誘発により、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になる可能性があります。
◆ 採卵後に、腹痛、出血、発熱がみられる事があります。
◆ 移植胚数により多胎になることもあります。
◆ 出生児の奇形、身体的発育、精神運動機能等に関しては、通常の出生児と比べて顕著な差はないと言われています。しかし、体外受精の歴史はまだ浅く、長期予後を含め判明していない点もあります。
◆ 父親が男性不妊症の場合、男児がその遺伝的因子を引き継ぐ可能性が報告されていますが、現段階では、十分に詳細は解明されておりません。
◆ 院内感染防止のため、1年に1回、ご夫婦に感染症検査(B型肝炎・C型肝炎・梅毒・HIV)を受けて頂きます。(費用は1人2000円~4000円)

費用

体外受精の費用は原則自費です。
お支払い方法は現金払いのみとなります。
クレジットカードはご利用頂けません。

排卵誘発にかかる費用は、毎回受付にてお支払い頂きます。
その他、以下の費用は、お伝えした日にまとめてお支払い頂きます。

採卵手術 80,000円~100,000円(麻酔の有無により別途)
媒精・培養 50,000円
胚移植 50,000円 ※ 休日: 60,000円
長期培養 30,000円( = 3日目から胚盤胞まで培養 )
融解 50,000円
顕微授精 60,000円
精子凍結 20,000円( 保存代1年分込 )
受精卵凍結 35,000円 ~ (詳細は下記別表参照)
卵子凍結 55,000円 ~ (詳細は下記別表参照)

※ 体外受精では、受精率ゼロ、または、低受精率(受精が20%以下)の方が15~20%にみられ、そのような受精障害を防ぐために、初回の方に限り、6個以上採卵できた場合は、体外受精と顕微授精の両方を行うこともできます。
顕微授精3個以下 … 4万円
顕微授精4個以上 … 6万円

「受精卵凍結費用」「卵子凍結費用」は下表参照

①基本費用*1
(休日含む場合は+5000円)
②クライオトップ*2
費用
(1本5000円)
受精卵 1回で凍結 3万円 5000円×本数 2日目の受精卵2個を
クライオトップ1本で凍結した場合
①3万円+②0.5万(1本)=合計3.5万円
2回で凍結 5万円 2日目と5日目(休日)の受精卵を
それぞれ1個ずつ凍結した場合
①5.5万円+②1万円(2本)=合計6.5万円
3~4回で凍結 6万円 2日目の受精卵2個をクライオトップ1本で凍結し、5日目と6日目の受精卵をそれぞれ1個ずつ凍結した場合
①6万円+②1.5万円(3本)=合計7.5万円
卵子の凍結 5万円 10個の卵子をクライオトップ4本
(1本に最大3個ずつ)で凍結した場合
①5万円+②2万円(4本)=合計7万円

*1 基本費用には、凍結保存代1年分が含まれています。
*2 クライオトップは卵を凍結する容器です。1本につき受精卵は2個まで(卵子は3個まで)凍結できます。

<注意点>
*クライオトップに何個ずつ凍結するかは、受精卵の状態、年齢、治療歴等によって判断させて頂きます。
*受精卵と卵子の凍結保存代は、1年ごとに2万円、精子の凍結保存代は、1年ごとに1万円です。凍結から1年経つ時にハガキでお知らせしますので、凍結の延長、または、破棄をお申し出ください。
*体外受精に関する費用は予告なく変更となる場合があります。

助成金

現在、不妊治療については健康保険が適用されておりません。
そのため、不妊治療の費用は、治療を受ける人にとっては大きな負担となっております。
そこで、各自治体では、不妊治療費の助成を行う自治体が増えてきています。
各自治体で定めている助成の条件(*)に該当する場合、全額ではない場合が多いのですが、不妊治療費の助成を受ける事ができます。

*各自治体で、助成金の金額や条件、申請方法が異なります。
詳しくは、お住まいの市区町村を管轄する保健所、または市区町村役場へお問い合わせください。

不妊治療の助成金制度についてのごあんないページ

顕微授精

通常の媒精法で受精しない例や、極度の男性不妊の方が適応となり、卵の細胞質内に、一匹の精子を顕微鏡下に注入する方法で、高い受精率が期待できます。

全体の妊娠率は30%前後で、4周期位まで施行するのが目安とされています。反復不成功例には、長期培養による胚盤胞移植や二段階胚移植などの方法もあり、個人個人により適応が異なりますので、よく相談の上、次回の方針を決定します。また、余剰卵は凍結保存を施行し随時、融解胚移植が可能です。

左から1日目、2日目、3日目、5日目の受精卵の写真です

受精卵の長期培養について

2008年度より、日本産婦人科学会会告により35歳未満の方の1、2回目の胚移植は原則1個となった為、良好な受精卵が多数ある方は長期培養して胚盤胞で移植する方法が選択肢としてあげられます。(長期培養費用:30,000円別途) 一般的に、2~3日目の分割期胚移植よりも胚盤胞移植の方が、移植あたりの妊娠率が良好なためです。ただし、胚盤胞に到達できる受精卵の割合は約50%程度となっています。

※5日目に胚盤胞になったら…5日目移植します。余剰胚盤胞は凍結保存します。
※6~7日目に胚盤胞になったら…移植はせず凍結保存とし、翌月以降に5日目移植します。
ただし、4日目に桑実胚の状態が良好であれば4日目に移植することもあります。
※胚盤胞に到達できなかった胚は廃棄となりますのでご了承ください。

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